描線

あるとき、鳥獣戯画の課題模写を通して、古典絵画に興味が湧きました。

線の描き方を強く意識し始めていた私は、日本の古典絵画にも"線"の表現があることに気付きました。

日本の古典絵画において、線の役割は特徴の一つです。例えば江戸時代の絵画の場合、浮世絵や肉筆画においても、墨による線(アウトライン)の強弱や濃淡で対象を形作るため、西洋の立体的表現と異なります。また、アウトラインが強調される事で、デザイン的なエッセンスも生まれ、引き締まった見え方になります。

そして自分の画風においても、次第に、アウトラインをいかに美しく描くか、にこだわりはじめました。 古典絵画の学びを深めたいと思い、専門課程は模写を選択しました。描画技術だけでなく、画材や道具への見識も深めていきました。従事していた先生に絵画修復現場へ連れて行って頂いたり、また南宋絵画を学ぶ機会にも恵まれました。

模写をする中で私にとって1番難しかったのが、作者の渾身の筆跡である"線"を再現することであり、また1番楽しくもありました。